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日本の大学は少子化の影響で入学者数が減少し、経営が困難になることが予想されている。入学者数の減少は大学の収入減を招き、研究や教育の質を保つことが難しくなる。
日本経済の競争力を回復させるためにも
こうした現状を踏まえて、中沢冬芽氏(25)は東京大学法学部在学中の2020年に、大学関係者、卒業生などの名簿を作成・管理することで大学への寄付金による資金支援の流れを作るベンチャー企業「Alumnote(アルムノート)」を作った。米グーグルやアップルジャパンでのインターンシップの経験などを生かし、起業に踏み切った。アルムノート社は、新産業の創出を支援する東京大学エッジキャピタルパートナーズなどから資金を調達し、総務省の起業家甲子園では総務大臣賞を受賞している。
中沢氏は「大学の経営は年々厳しくなっている。日本経済の競争力を回復させるためにも次世代の教育環境を強化する投資が重要だ」と語る。アルムノート社は2021年12月に、大学の支援者ネットワークの拡大と寄付文化の醸成を目的としたイベント「Giving Campaign(ギビング・キャンペーン)」を実施し、2022年10月には18の国公立大学が、2023年6月には私立大2校を含む12の国公立・私立大学が参加した。11月には約40の国公立・私立大学が参加予定という(ギビング・キャンペーンのサイトは こちら )。
卒業生を大事にし大学を支える形を
過去3回のキャンペーンでは合計1.8億円の寄付金が寄せられたという。中沢氏は、こうした取り組みを進めることで将来的には各大学の教育・研究基盤を支援する仕組みに発展させていきたいと考えている。
キャンペーンの仕組みはこうだ。1週間のイベントをオンラインで開催。各大学が、特設サイトに部活動やサークル活動、研究室など個別に活動の概要などを記載する。卒業生らがサイトにアクセスして、応援メーセッジを送ったり、寄付金を送金したりする。
中沢氏によると、慶応大学などの一部を除いて、一般的に大学が卒業生の情報を管理する体制は
研究や人材育成に目を向けてもらい支援の輪を
過去2回のキャンペーンに参加した東北大学の総務企画部基金・校友事業室特命課長の小玉亨氏は、「東北大のギビング・キャンペーンには卒業生ら2万6000人が参加し、そのうちの4%程度の人が寄付をしてくれた。学生の部活動の支援費としては大きい金額だった」という。だが、キャンペーンでの寄付額の多寡に加えて、2万6000人の卒業生らの名簿を作ることができたことに価値があるのだという。キャンペーンで得た名簿をベースに、オンラインで、継続的にコミュニケーションを取りながら、様々な支援を依頼することができる。学生の部活など課外活動への支援を入り口に、今後は、大学本来の研究や人材育成に目を向けてもらって支援の輪を広げることが課題だとしている。